けさぱさ!〜バンドマン辞めました〜

バンドマンに群がる女の子たちの駆け込み寺

葬式では泣けないけどメンマでは泣ける

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知り合いが死んだ。


それでもやっぱりワタシは泣けなかった。

 

 

知り合いが死んだ時の話


彼は突然、死んだ。自由奔放で面白くて、いい意味でブッ飛んでいる人だった。ダメな大人の手本でもあった。ちょっとだけ尊敬していた。


SNSは彼への賞賛で溢れた。
たいして仲良くもない人まで、彼の事を語り出した。


「あいつは〜〜〜だった。」
「きっと天国でも〜〜しているだろう。」
「彼の分も俺たちで〜〜。」


彼の死は一種のイベントだった。
死んだら友達が増える。勝手だ。
死にたくないなぁと思った。


周りが大盛り上がりしていても、ワタシは実感なんて沸かなかった。沸かなかったから、悲しくなかった。苦しくもなかった。


告別式に行った。


やっぱりそこでも、ワタシは実感なんて沸かなかった。沸かなかったから、悲しくなかった。苦しくもなかった。


ワタシは過去に、周りの人が同じ日に一斉に亡くなった事があった。普通じゃ起こり得ない事だった。その時も、今みたいに、ボケーっとしていた。とりあえず意味がわからなかった。ただ、それだけだった。


あの時も、泣いたのは暫くたってからだった。
「いない」と思った時に、悲しくなって涙がポロポロと頬を伝っていった。


今回だって、お葬式の真っ最中みたいな暗い顔をしている人たちに囲まれても(そもそも、これ、葬式だった)、ワタシは涙なんてひとつも溢れてこなかった。


泣かないまま、告別式が終わった。


一緒に参列した友達に「ラーメン食って帰ろうか!」と言われ、ワタシはラーメン屋に入った。


「あいつ、いっつもメンマだけ避けて食ってたよね。後で一気にメンマを食べるとメンマの味が濃くなって美味しいから、って、馬鹿だよね。」


友達がそう言って、メンマを避け始めた。
ワタシも真似をしてメンマを避けた。

 

お腹いっぱいになったワタシ達の目の前のスープには、メンマだけが取り残された。寂しそうにスープを泳ぐメンマをみながら、よくワタシは自分のメンマを彼の丼の中に入れていたなぁ、って事を、思い出した。


「ワタシだってメンマ好きなのに!」って言いながら、いつもいつも、彼にメンマをあげていた。


その光景を思い出した瞬間、涙がポロポロ出てきた。


友達もワタシの涙につられて泣いた。泣きながら、みんなで残ったメンマを口の中に入れた。


「言うても、そんなに味濃くならないじゃん。」
「ね。」
「でもワタシ、メンマあげてたじゃん?あれでちょっとは濃くなってたのかな?」
「そうかもね。」
「天国でメンマくれる友達いるかなぁ?」
「そもそも天国行けるか謎だよね。」
「そっか。」


天国に行けたか地獄に落ちたかは知らないけど、もうこの世に彼がいないという事は事実だ。ワタシは今日から、メンマを他人に与えず、自分で自分のために食べる事ができる。